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ボーエ・モーエンセンってどんな人?: デンマークの庶民を支えた有名家具デザイナーを解説

ボーエ・モーエンセン(Børge Mogensen, 1914–1972)は、デンマークの家具デザイン史において「Danish Modern(デニッシュモダン)」を象徴する巨匠の一人です。モーエンセンの名は、シンプルで機能的、そして時代を超えて愛される家具とともに刻まれています。モーエンセンは「人々のための家具」を掲げ、装飾過多なデザインを避け、実用性と人間中心の思想を貫いたデザイナーとして知られています。この記事では、彼の歴史やデザイン哲学について、代表作な家具とともに解説します。

目次

モーエンセンの歴史: クリントとデニッシュモダン

若き日の学びとクリント

https://www.axismag.jp/posts/2024/11/622594.html

ボーエ・モーエンセンは1914年、デンマークのオールボーに生まれました。彼のキャリアの基盤を築いたのは、コペンハーゲンの美術工芸学校およびデンマーク王立芸術学院での教育です。ここで彼は、後に「デンマーク近代家具の父」と称されるコーア・クリントに師事しました。クリントは、人間の身体測定(エルゴノミクス)に基づく機能主義的なデザインを重視し、余計な装飾を排除したプロポーションの美しさを追求しました。この教えはモーエンセンに深い影響を与え、彼のデザイン哲学の礎となりました。

若き頃のモーエンセンは異文化の伝統的家具から多大なインスピレーションを得ました。特に、アメリカのシェーカー教徒が18~19世紀に製作したシェーカーチェアの質素で機能的な美学や、イギリスのウィンザーチェアの簡潔な構造に強く惹かれました。また、日本の工芸や世界各地の民藝家具にも関心を寄せ、伝統的な職人技術と近代的な実用性の融合を試みたのです。これらの影響が、彼の「機能優先」「視覚的明快さ」「過度な実験の回避」というデザインの基調を形作りました。

戦後デンマークとデモクラティック・デザイン

https://greeniche.jp/pages/daikanyama-event-borge-mogensen

モーエンセンが活躍した20世紀中盤は、第二次世界大戦後の復興期から高度成長期にかけてのデンマークでした。この時代、戦後の物資不足や住宅難の中で、一般市民に手頃で耐久性のある家具を提供する「デモクラティック・デザイン(民主的なデザイン)」の思想が広がっていました。こうした社会的要請に応え、モーエンセンは1942年、28歳の若さでデンマーク生活協同組合連合会(FDB)の家具部門チーフデザイナーに就任。庶民のための家具の開発に取り組みました。

FDB時代、モーエンセンはデザインの標準化と合理化を推進し、国内で入手可能なビーチ材やオーク材を活用した量産型家具を設計しました。機械加工を導入しつつ、手仕事が必要な部分は内職制度を採用し、地域住民の雇用創出にも寄与。この取り組みは、戦後社会のニーズと地場産業の持続性を反映したものでした。モーエンセンの家具は「People’s Furniture(人々の家具)」として親しまれ、「人民のデザイナー」と呼ばれる礎を築き上げました。

独立後の挑戦

https://www.deco-boco.com/borge-mogensen-model122-chair-teakoak-soborg-mobler

1950年にFDBを離れ独立したモーエンセンは、自身のスタジオやフレデリシア社で新たな創作に挑みます。独立後は実験的なデザインにも挑戦しつつ、木や革といった自然素材の魅力を最大限に引き出し、新しい生活様式に適した家具を提案しました。しかし、彼の根底にある「誰もが長く使える良質な家具」という信念は揺るがず、時代を超えた普遍性を保ち続けました。

モーエンセンのデザイン理念

「人々のための家具」という信念

https://www.talo.tv/view/item/000000015970

モーエンセンのデザイン哲学は、「家具は人間に仕える道具であるべき」という考えに集約されます。彼は「物の都合で人が順応させられるのではなく、人間を主体に据えること」を目標に掲げ、家具が暮らしの主役ではなく背景として機能するよう設計しました。そのため、彼の作品は装飾を極力排し、シンプルで落ち着いた造形と高品質な素材による頑丈な構造が特徴です。

この思想は、師クリントの機能主義やシェーカースタイルの影響を受けつつ、彼独自の視点で昇華されたものです。モーエンセンは、必要最小限で日常生活を豊かにする実用的な家具を追求し、視覚的な明快さと抑制された様式を重視しました。流行に左右されないデザインは、世代を超えて通用する普遍性を備えています。

伝統と現代の融合

https://greeniche.jp/blogs/staff-magazine/story-about-borge-mogensen

モーエンセンは伝統的な職人技術に敬意を払いつつ、それを現代の生活に適応させる手法を得意としました。例えば、シェーカーチェアやウィンザーチェアの簡素な美を学び、日本の民藝に見られる手仕事の温もりを参考にしています。

モーエンセンはこれらを近代的な量産技術と結びつけ、実用性と手工芸のバランスを取ったデザインを生み出しました。このアプローチは、社会的背景とも密接に結びついており、戦後デンマークの「誰もが良質な家具を使える社会」という理想を体現しました。

モーエンセンの代表的な家具デザイン3選

J39チェア

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J39チェアは、モーエンセンがFDB時代に1947年に発表した傑作で、「人民の椅子(People’s Chair)」としても知られています。シンプルな木製フレームにペーパーコードで編んだ座面を組み合わせたこの椅子は、機能美と温もりを両立しています。
デザインの着想はシェーカーチェアに由来し、その素朴さを現代的に再解釈(リデザイン)したもの。コストを抑えつつ品質を確保したこの椅子は、デンマークでベストセラーとなり、75年以上生産が続くロングセラーとなりました。

ハンティングチェア

https://e-kondo.jp/products/917-694

1950年に発表されたハンティングチェアは、モーエンセンが独立後に手掛けた実験的なラウンジチェアです。座面高約30cmの低さと、前脚から後脚へ斜めに伸びる大胆なフレームが特徴。厚いサドルレザーを座と背に張り、革ベルトで固定する構造は、武骨で力強い印象を与えます。調節可能なベルトは実用性を高め、短い肘掛けでも快適に使える設計が施されています。FDBから独立後のモーエンセンが設計した挑戦的な傑作チェアです。

スパニッシュチェア

https://scandinavian.co.jp/product/2226-spanish-chair-oak-soap-natural-leather/

1958年のスパニッシュチェアは、スペインの伝統椅子に着想を得たラウンジチェアで、国際的な名作です。オーク無垢材のフレームに厚革を張り、幅広のアームレストはサイドテーブル代わりに使える実用性を備えます。
スペイン旅行で目にした古い革張り椅子に着想を得たモーエンセンは、それをモダンなフォルムにリデザインして設計しました。ゆったりした座り心地と彫刻的なフォルムで、60年以上経ても色褪せないタイムレスな魅力を持つ逸品です。

まとめ

ボーエ・モーエンセンは、デニッシュモダンの精神を具現化し、「人々のための家具」を生涯追求しました。彼のデザインは、シンプルさと機能美を通じて現代の暮らしに寄り添い続け、その遺産は今も世界中で息づいています。

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この記事を書いた人

スマートホーム×インテリア×DIYで理想の暮らしを目指しています。落ち着いた雰囲気が大好き。

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